【Athlete’s Choice】レーシングドライバー・山野哲也選手のサングラス

全日本選手権最多勝記録を持つレーシングドライバー・山野哲也選手

アスリートが持つアイウェアへのこだわりを紹介するシリーズ。
今回はドライビング用レンズ「ULTRA LENS for DRIVING」の開発を担当したレーシングドライバー・山野哲也選手。

山野選手は自身が参戦するジムカーナ競技においても、このレンズを搭載したサングラスを着用している。
【1000分の1秒を争う競技の世界においても、着用することにメリットがある】
そう判断した理由を、山野選手に伺った。

■ULRA LENS for DRIVINGとは?

開発コンセプトは、公道を安全に走るためのレンズ。
【日差しのまぶしさを抑えながら、運転に必要な情報をしっかりと眼に届けること】
このレンズを通して見ると、アスファルトを構成する砕石の一つひとつが粒立って見え、路面の凹凸や轍、さらにはオイル染みや水の存在まで捉えやすくなる。
また、運転中に注意すべき標識やブレーキランプなど、赤や黄色の視認性を高めていることも特長だ。

出走準備中の競技車両。ダッシュボードがサングラス定位置だ。

山野「レンズ開発テストは公道で行っていましたが、運転時に必要な情報というのは、一般道でも競技でも基本的には変わりません。眼で見た情報を脳が処理し、それを手足に伝えて、ステアリングやペダルを操作する。いわゆる『予測→認知→判断→操作』という流れです。
見やすいレンズというのは、必要な情報を早く、正確に眼に届けてくれるレンズでもあります。であれば、その後の判断や操作の早さにもつながってくる。これは競技でも有効なのではないか、というアイデアが生まれました。」

ここで、山野選手が参戦する「ジムカーナ」という競技について触れておきたい。

山野選手がドライブする競技車両。赤いパイロンギリギリを攻めていく。

複数の車両が一斉にスタートするレースとは異なり、ジムカーナは設定されたコースを1台ずつ走り、そのタイムを競う。タイム計測の機会はわずか2回。事前の試走は許されない。

1本の競技時間は70~80秒程度。パイロンへの接触、コースからの脱輪には5秒のペナルティが加算される。1000分の1秒を競う世界において、この5秒が何を意味するかは説明するまでもない。
限界まで攻めながらミスなく走り切る、極めて高い正確性が要求される競技である。

試走の代わりに行われるのが、「慣熟歩行」と呼ばれるコースの下見である。
選手たちは競技前、実際のコースを歩き、パイロンの位置や路面状況、走行ラインを自らの眼で確かめていく。許される時間は30分~60分程度である。

慣熟歩行から競技は始まっている。限られた時間でいかに多くの情報を得られるか? リラックスした1枚目写真との表情の違いにも注目。

山野選手が最初にULTRA LENS for DRIVINGの可能性を感じたのは、この慣熟歩行だったという。

山野「着用してみたところ、ジムカーナで重要になるパイロンが裸眼より認識しやすいことに気づきました。公道でブレーキランプの赤をはっきり見せるレンズの特性が、ジムカーナではパイロンの赤を際立たせてくれたわけです。もちろん、路面も見やすい。アスファルト表面の状態がよくわかるんですね。『ここはグリップが高そうだ』とか、『このオイル染みは気をつけた方がいい』とか。そういった情報が得やすくなるんです。」

慣熟歩行で体感できたレンズの特長が本番の競技走行でも使えるのではないか?そう考えるのは自然な流れだった。しかし、そこにはひとつ大きな問題があった。ヘルメットである。

パドックからスタート地点へと移動する。競技中はもちろんヘルメットを着用する。

激しく車両の姿勢を変化させるジムカーナでは、加速、減速、旋回によるGが絶えずドライバーの身体に加わる。そのためヘルメットは、強いGを受けても動かないよう、内部のパッドによって頭部をタイトに保持する設計になっている。

そこへ一般的なサングラスのテンプルを差し込むと、ヘルメットのパッドによって強く押さえつけられ、耳の周辺に痛みが生じてしまう。視界を良くするための道具が、運転への集中を妨げてしまっては意味がない。

【パフォーマンスにつながるレンズだからこそ、競技でも使えるようにしたい】
山野選手から寄せられたその要望に応えるための開発が始まった。

現在、山野選手が競技で使用しているサングラスは、市販モデルとはテンプルの形状が異なるワンオフ品である。

タイトなヘルメットの中に装着しても、痛みやずれが生じにくいこと。ヘルメットの開口部に対して、レンズが適切な位置に収まること。そして耳から後頭部へ向かって、テンプルが無理なく収まること。

長さ、厚さ、形状を検討するにあたっては、3Dスキャナで取得した山野選手の頭部立体データも活用された。

レンズの性能を競技で生かすために、サングラスそのものをドライバーとヘルメットに合わせていく。そうして完成した一本である。

  • ヘルメット開口部からサングラスのテンプルを差し込む。頭部とヘルメットとの間にしっかりと固定される。

  • スペシャル形状のテンプルが装着されたモデル。「26」は年間チャンピオン獲得回数。もちろん日本記録だ!

スタート前、集中力を高めていく。その視線はULTRA LENSの先にある。

取材に伺った日、全日本選手権が行われた鈴鹿サーキット南コースには厚い雲が垂れ込めていた。時折、雨粒も落ちてくる。少なくとも、「日差しのまぶしさ」を避けるためにサングラスを掛けたくなるような空ではない。それでも山野選手は、ULTRA LENS for DRIVINGを選んだ。

山野「単純に視界全体を暗くするレンズではないので、曇りの日でも着用する意味があります。本来、路面と眼の間には何もないのが一番のはずなんです。僕にとっては、フロントガラスの汚れだって許せないくらいですから。そこにさらに1枚、レンズを挟むわけです。当然、普通に考えれば視認性は落ちる方向のはずです。でも、このレンズは逆なんです。掛けた方が、必要なものが見やすくなる。」

山野選手は2本目のアタックでトップタイムを記録し、通算152勝目を挙げた。自身が持つ最多優勝記録を、またひとつ更新したことになる。

  • ULTRA LENS for DRIVINGを装着!

  • 最高の走りとなった2本目のアタック。パイロンに向けて車がクイックに動いていく。

公道を安全に走るために生まれた一枚のレンズは、やがて1000分の1秒を争う競技の世界へと持ち込まれた。
そこで求められたのは、特別な何かを見ることではない。路面の状態。パイロンの位置。そして、その先にある走るべきライン。ドライバーが予測・認知・判断・操作をするために必要な情報を、より早く正確に捉えること。

山野哲也選手の視界には今日も、ULTRA LENS for DRIVINGがある。

山野哲也選手

■山野選手プロフィール

山野 哲也(やまの てつや)

■生年月日
1965年10月2日

■大会成績(2026年時点)
JAF史上日本一優勝回数の多いレーシングドライバ ー。
カテゴリを問わず速さ・強さを発揮する。

おもなチャンピオン獲得
・全日本ジムカーナ選手権:26回
・SUPER GT/全日本GT選手権:3年連続3回
・スーパー耐久:2回
そのほか、パイクスピークインターナショナルヒルクライムなど多数。

自身の経験を生かして車両やパーツの開発アドバイザリーやジャーナリストとしても活躍中。インプレッション記事は自動車専門誌やWEBメディアに掲載。

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